人生って、ほんと、いろいろありますよね。うまくいかないことばかりで、どうしようもなくなる時。そんな時、ふと「もうどうにでもなれ!」って、自暴自棄になって、誰かを傷つけたり、法律を破ったりするような道に足を踏み入れてしまう人がいる。でも、そういう行為って、本当に賢い選択なんでしょうか?今回は、そんな「自暴自棄になって犯罪に走る」という選択肢が、どれだけ割に合わないか、そして、もっと建設的な道があるのかを、感情を抜きにして、事実と合理性に基づいてじっくり考えていきたいと思います。
■どうして「自暴自棄」が損なのか?損害賠償のお話
まず、一番わかりやすいところから。「損害賠償」。誰かを傷つけたり、何かを壊したりしたら、当然、その埋め合わせをしなくちゃいけない。それが損害賠償です。でも、ここで現実的な問題が出てきます。もし、あなたが自暴自棄になって、誰かに損害を与えたとしましょう。相手は当然、あなたに損害賠償を求めてきます。裁判になって、あなたが賠償金を支払うことになったとします。
ここで、冷静に考えてみましょう。もし、あなたが「もうどうにでもなれ」という状態になるくらい追い詰められているなら、そもそも、どれくらいの財産を持っているでしょうか?多くの場合、そういう状況にある人は、経済的に困窮していることが多いはずです。つまり、相手に損害を与えたとしても、あなたに十分な財産がなければ、損害賠償を請求されても、残念ながら回収できない可能性が高いんです。
これは、統計データを見ても明らかです。例えば、日本の家計の貯蓄率を見てみましょう。総務省の家計調査によると、2023年の家計の貯蓄額の中央値は、単身世帯で約300万円、二人以上の世帯で約600万円程度です。これはあくまで中央値なので、もっと貯蓄が少ない世帯もたくさんあります。もし、あなたがこの中央値よりも少ない貯蓄しか持っていない、あるいは貯蓄が全くない状態だとしたら、高額な損害賠償を請求されても、支払う能力がない、ということになります。
「でも、裁判で勝てばいいんでしょ?」と思うかもしれません。確かに、裁判で勝訴して、賠償金を支払う義務があるという判決を得ることはできます。しかし、裁判というのは、勝ったとしても、相手がその判決に従って、きちんと支払ってくれるとは限りません。相手に支払う能力がない場合、たとえ判決が出ても、絵に描いた餅になってしまうんです。
■相手にお金がなくても、泣き寝入りはできない?でも…
「じゃあ、事故で車をボコボコにされたり、インターネットでひどい誹謗中傷を受けて精神的なダメージを受けたのに、加害者が貧乏だったら、泣き寝入りするしかないのか?」そんな風に思うかもしれませんね。確かに、加害者が無資力だと、損害賠償を請求しても、実際に支払ってもらうのが難しいケースは少なくありません。
ここで、ちょっと専門的な話になりますが、損害賠償を請求するためには、まず「誰が加害者なのか」を特定する必要があります。例えば、インターネット上での誹謗中傷の場合、匿名掲示板などに書き込まれた情報だけでは、すぐに相手を特定することはできません。相手を特定するためには、「発信者情報開示請求」という法的な手続きを踏む必要があります。
この発信者情報開示請求ですが、これがまた簡単ではありません。まず、プロバイダ責任制限法という法律に基づいて、プロバイダ(インターネット接続業者)に対して情報開示を求めることになります。しかし、プロバイダによっては、すぐに情報開示に応じてくれない場合もありますし、法的な手続きを段階的に踏む必要が出てきます。そして、最終的に相手の住所や氏名がわかったとしても、その人が資力がない、となれば、やはり回収は難しくなります。
さらに、開示請求や訴訟には、当然、費用がかかります。弁護士に依頼すれば、着手金や成功報酬が発生しますし、裁判所に納める印紙代や郵券代なども必要です。例えば、損害賠償請求訴訟の印紙代は、請求額の数パーセントになります。もし、請求額が100万円だとすると、印紙代だけで数万円はかかります。弁護士費用も考えると、数万〜数十万円、場合によってはそれ以上の費用がかかることも珍しくありません。
そこで、費用対効果を考える必要があります。もし、あなたが被った損害額が10万円だったとします。しかし、開示請求や訴訟にかかる費用が20万円だったとしたら、どうでしょうか?裁判で勝ったとしても、結局は持ち出しになってしまうんです。これは、合理的な判断とは言えませんね。
■感情に流されない、賢い選択肢とは?
では、どうすればいいのか。自暴自棄になって犯罪に走るというのは、明らかに損な選択です。では、その代わりに、どのような選択肢があるのでしょうか。
まず、もしあなたが誰かに損害を与えてしまった場合、あるいは誰かから損害を受けた場合、冷静に状況を把握し、法的な専門家(弁護士など)に相談することが重要です。弁護士は、あなたの状況を客観的に分析し、最も費用対効果の高い解決策を提案してくれます。例えば、相手に資力がない場合でも、示談交渉を粘り強く行うことで、一部でも賠償金を得られる可能性がないか、あるいは、相手の勤務先や保証人などを調査して、強制執行の可能性を探ることもできます。
また、もしあなたが被害者で、加害者が無資力であることが明白な場合でも、諦める必要はありません。例えば、交通事故の場合、加害者が無保険であったとしても、自賠責保険や任意保険に加入している場合があります。まずは、相手が加入している保険会社に連絡を取り、示談交渉を進めることが考えられます。
さらに、もし相手が全く支払う意思も能力もない場合、すぐに諦めるのではなく、他の法的な手段を検討することもできます。例えば、相手の財産を差し押さえる「強制執行」という手続きがありますが、これを行うためには、まず債務名義(裁判所の判決など)が必要です。そして、相手に差し押さえるべき財産(給料や銀行預金など)があることが前提となります。
■社会への貢献という視点
ここまでの話で、自暴自棄になって犯罪に走ることが、どれほど損で、非合理的な選択であるか、お分かりいただけたかと思います。では、もしあなたが今、何かに絶望しているとしたら、どのような考え方を持つべきでしょうか。
それは、「社会への貢献」という視点です。
「え、自分だって大変なのに、なんで社会に貢献しなきゃいけないの?」と思うかもしれません。しかし、少し立ち止まって考えてみてください。私たちは、一人では生きていけません。家族、友人、地域社会、そして国。私たちは、常に誰かと関わり合いながら生きています。
もし、あなたが自暴自棄になって、法を犯したとします。それは、あなた自身を社会から切り離し、孤立させる行為です。刑務所に入れば、社会とのつながりは断たれます。そして、出所したとしても、過去の過ちから、社会復帰が困難になることもあります。これは、あなた自身にとっても、大きな損失です。
一方で、もしあなたが、困難な状況にありながらも、法を守り、誠実に生きようと努力したとします。それは、あなた自身を大切にすることであり、同時に、社会の一員としての責任を果たすことでもあります。
例えば、あなたが経済的に困窮しているとします。その状況を改善するために、一生懸命働いたり、スキルアップのために勉強したり、あるいは、社会福祉制度を上手に活用したり。こうした地道な努力は、たとえすぐに大きな成果に結びつかなくても、あなた自身を成長させ、将来への希望をつなぎます。
そして、もしあなたが、誰かに傷つけられた経験があるとします。その辛い経験を乗り越え、同じような被害に遭う人を減らすために活動したり、社会の仕組みを変えるために声を上げたり。そうした行動は、たとえ直接的な金銭的補償にはならなくても、社会全体にとって、大きな貢献となります。
■具体的な数値で見る「社会貢献」の価値
「社会貢献」と聞くと、漠然としたイメージしか湧かないかもしれません。しかし、社会貢献には、様々な形があり、その価値は数値化できないものも多いですが、一部は経済的な側面からも捉えることができます。
例えば、ボランティア活動。内閣府が実施した「ボランティア活動に関する調査」によると、ボランティア活動に参加する人の割合は年々増加傾向にあります。ボランティア活動は、直接的な報酬はありませんが、参加者自身のスキルアップや、社会とのつながりを深める効果があります。また、社会全体で見ると、ボランティア活動によって、公共サービスが円滑に運営されたり、福祉が向上したりする効果が期待できます。
また、起業家が社会課題の解決を目指して事業を行う「ソーシャルビジネス」も、社会貢献の一形態です。例えば、経済産業省の調査では、ソーシャルビジネスの市場規模は拡大傾向にあり、多くの企業が、利益を追求するだけでなく、社会的なインパクトを重視した経営を行っています。
さらに、税金を納めるという行為も、社会貢献です。私たちが納める税金は、道路や橋の建設、学校や病院の運営、警察や消防の活動など、社会インフラや公共サービスの維持に不可欠です。もし、誰も税金を納めなくなったら、私たちの生活は成り立たなくなってしまいます。
■希望を見失わないための、現実的なステップ
もし、あなたが今、何かに絶望し、道を見失いそうになっているのであれば、まずは、感情に流されず、事実を冷静に分析することから始めてみましょう。
1. ■現状の客観的な把握:■ 自分が置かれている状況(経済状況、人間関係、健康状態など)を、感情を抜きにして、できるだけ客観的に書き出してみましょう。
2. ■問題点の特定:■ 把握した状況の中から、具体的に何が問題なのかを特定します。
3. ■解決策の検討:■ 特定した問題点に対して、どのような解決策があり得るのかを、現実的に考えます。この際、法律や制度、専門家の意見などを参考にすることが重要です。
4. ■行動計画の作成:■ 検討した解決策の中から、実行可能なものを選び、具体的な行動計画を作成します。小さなステップからでも構いません。
5. ■専門家への相談:■ 必要であれば、弁護士、カウンセラー、社会福祉士などの専門家に相談します。
自暴自棄になって犯罪に走ることは、一時的な感情の発露かもしれませんが、その結果、失うものは計り知れません。それは、自由だけでなく、未来、信頼、そして人間としての尊厳です。
一方で、困難な状況にあっても、誠実に、そして建設的に生きようと努力することは、あなた自身を成長させ、社会とのつながりを深め、より良い未来へと繋がっていきます。
「自分は一人じゃない」。そう信じて、一歩ずつ、前に進んでいきましょう。社会への貢献とは、壮大なことでなくても構いません。日々の生活の中で、誠実に、そして周りの人に配慮しながら生きること。それ自体が、立派な社会貢献なのですから。

