■「うまくいかない」を「どうにかする」に変える思考のスイッチ
なんだか最近、物事がうまくいかないな、って感じること、ありますよね。仕事でも、プライベートでも、「あの人がさあ」「あの時の状況がね」なんて、ついつい外のせいにしてしまう。でも、ちょっと待ってください。その「うまくいかない」の裏側には、もしかしたら、あなた自身の「考え方」が隠れているのかもしれません。今回は、そんな「他責思考」や「甘え」を卒業して、自分で状況を動かす「主体的な行動」を、もっともっと面白く、そして成果に繋げていくための「思考のスイッチ」について、一緒に考えていきましょう。
「うまくいかない」という状況に直面したとき、人は無意識のうちに、その原因を自分以外のところに探しがちです。例えば、面接の場面で、「時間が足りなくて、本当はもっと良いパフォーマンスができたはずなのに」とか、「上司が無茶な目標を設定してくるから、達成できなかった」なんて話を聞くことがあります。もちろん、現実には、時間や人間関係、組織のルールなど、私たちだけではどうにもならない外的要因があるのは事実です。でも、そういった「外的要因」ばかりを強調してしまうと、聞いている側は、「この人は、自分の力で状況を変えようとするよりも、環境のせいにすることが得意なのかな?」と感じてしまうかもしれません。
なぜ、私たちは他人のせいにしたくなるのでしょうか?心理学的に見ると、これは「防衛機制」の一つとして説明できます。自分の失敗や、うまくいかない状況に直面したとき、自己肯定感を守るために、無意識のうちに「自分は悪くない」という状況を作り出そうとするのです。これは、ある意味、人間として自然な反応とも言えます。しかし、この防衛機制が強くなりすぎると、問題解決から遠ざかってしまったり、成長の機会を逃してしまったりすることになるのです。
例えば、あるプロジェクトで想定外のトラブルが発生したとしましょう。ここで、「いやー、あの時の〇〇さんがちゃんと確認してくれなかったせいで…」と、すぐに原因を他人に求めてしまうと、その場は一時的にスッキリするかもしれませんが、根本的な解決にはつながりません。むしろ、「じゃあ、次からはどうすれば、〇〇さんのミスを防げるように、あるいは、〇〇さんに確認を徹底してもらえるように働きかけられるだろうか?」とか、「もし、〇〇さんが確認を怠ったとしても、もう一つ別のチェック体制を自分で作っておくことはできないだろうか?」といった、より建設的な次のステップが見えにくくなってしまうのです。
過去の経験を振り返ってみましょう。何か失敗や、うまくいかなかった経験って、誰にでもありますよね。その時、その失敗の原因を、具体的に「誰か」や「何か」のせいにしていませんか?例えば、学生時代のテストで良い点が取れなかった時に、「先生の教え方が悪かった」とか、「周りの友達がうるさくて集中できなかった」なんて言っていませんか?もし、そういったエピソードが、あなたの話の中心になりがちなら、それはもしかしたら、自分自身で「なぜうまくいかなかったのか」を深く掘り下げて、次に活かすという習慣が、まだあまり身についていないサインかもしれません。
「他責思考」の人は、ともすると、当たり障りのない返答に終始しがちです。面接で、「あなたにとって、仕事で一番大切なことは何ですか?」と聞かれたときに、「チームワークです」とか「お客様への貢献です」といった、誰にでも言えるような、無難な答えしか返ってこない。感情をあまり表に出さずに、常に冷静で、客観的に聞こえるかもしれません。しかし、そこから、その人が「この状況をどう捉え、どう行動したいのか」という、その人自身の「意志」や「情熱」が伝わってこないと、聞いている側は「この人は、本当に自分の意見を持っているのだろうか?」「何か問題が起きた時に、自分で考えて行動できるのだろうか?」と、少し不安になってしまうことがあるのです。
では、どうすれば、この「他責思考」や「甘え」から抜け出し、もっと主体的に、そして前向きに行動できるようになるのでしょうか?ここでは、いくつか具体的な「思考のスイッチ」を、一緒に探っていきましょう。
■「運」を味方につけるための、もう一つの視点
「あなたは運が良い方だと思いますか?」という質問、これ、一見すると、単なる雑談のように聞こえるかもしれません。でも、この質問の答え方には、その人の「思考のクセ」が表れやすいんです。
もし、「はい、私はすごく運が良いと思います!」と即答できる人は、おそらく、うまくいった出来事を「自分の努力や選択の結果」として捉え、それを「運が良い」と表現しているのかもしれません。つまり、ポジティブな出来事を、自分の中に引き寄せている、あるいは、見つけ出すのが得意なタイプと言えるでしょう。
一方で、「うーん、どうでしょうね…」と濁したり、「いや、むしろ運が悪い方だと思います」と答える人は、うまくいかなかった出来事を、運が悪かったせいだと結論づけやすい傾向があるかもしれません。もちろん、本当に不運な出来事が続くこともあります。しかし、もし、そういったネガティブな出来事が続いていると感じるなら、それはもしかしたら、あなたが「運の悪さ」にばかり焦点を当ててしまっているから、という可能性もあるのです。
ここで、科学的な視点から見てみましょう。心理学には、「確証バイアス」というものがあります。これは、自分の信じていることを裏付ける情報ばかりを集めてしまい、それに反する情報は無視してしまう、という人間の思考のクセです。つまり、「自分は運が悪い」と信じている人は、意識的・無意識的に、運が悪かった出来事ばかりを記憶し、それを「やはり運が悪かった」という証拠にしてしまうのです。逆に、「自分は運が良い」と信じている人は、うまくいった出来事に目を向け、それを「運が良い」という証拠にする、というわけです。
つまり、「運が良いですか?」という質問への答えは、単なる自己評価ではなく、自分がどのような情報に焦点を当て、それをどう解釈するかの「傾向」を示していると言えるのです。そして、この「傾向」は、後から変えていくことが可能です。
■「あの人」ではなく「自分」に焦点を当てる
次の質問、「前職の上司はどんな方でしたか?」これも、意外なほど、その人の「責任の所在」を炙り出す質問です。
もし、「うちの上司は、本当に最悪で、いつも指示が曖昧で、私の足を引っ張ってばかりでした」とか、「とにかくパワハラ気味で、ストレスが溜まる一方でした」なんて話が延々と続くようであれば、それは、その人が、過去の人間関係における問題や、うまくいかなかった経験を、すべて「上司のせい」にしてしまっているサインかもしれません。
もちろん、世の中には、本当に困った上司や、理不尽な人間関係も存在します。しかし、もし、そのような経験を語るときに、常に「相手」を悪者にしてしまうのであれば、それは、その人が「自分自身」に焦点を当てて、状況を改善しようとする視点を、まだ持っていないのかもしれません。
例えば、上司の指示が曖昧だったとしても、「指示が曖昧だから、自分で確認すべき点をリストアップして、積極的に質問しよう」とか、「上司の意図を汲み取るために、過去の類似事例を自分で調べてみよう」といった、自分から能動的に動くことで、状況は変わっていくはずです。
ここでも、「責任転嫁」というキーワードが出てきます。人間は、自分の失敗や、うまくいかない状況に直面したとき、無意識のうちに、その責任を「他者」に転嫁することで、自己のダメージを軽減しようとします。これは、先ほども触れた「防衛機制」の一つですが、これが習慣化してしまうと、問題解決能力が著しく低下してしまうのです。
例えば、ある研究では、他責思考が強い人は、困難な課題に直面した際に、解決策を見つけるよりも、その問題の原因を他人のせいにする方が、一時的なストレス解消効果が高いとされています。しかし、長期的には、問題解決能力の低下や、人間関係の悪化を招くことが示唆されています。
■「今」と「ここ」でできることを見つける
最後の質問、「前職になくて、当社にあるものは何ですか?」これは、入社を検討している会社への「期待」や、「希望」を問う質問ですが、これもまた、その人の「主体性」を測るのに役立ちます。
もし、「正直、前職とあまり変わらない気がします」とか、「特にありません」といった答えが返ってきたら、それは、もしかしたら、その人が、新しい環境で「自分から何かを見つけよう」「自分から何かを創り出そう」という意欲に欠けているサインかもしれません。
逆に、「前職では、〇〇のような制度がなかったので、貴社では△△のような制度があることに期待しています。それによって、□□のような貢献ができると考えています」といった具体的な答えが返ってくる場合は、その人が、自分のキャリアや、会社への貢献について、しっかりと考え、主体的に行動しようとしている証拠と言えるでしょう。
ここで重要なのは、「前職になくて、当社にあるもの」という質問に、「単に、前職の不満をぶつける場」として捉えてしまうことです。例えば、「前職は給料が安かったので、貴社は給料が高いと聞いています」という答えは、表面上は会社の良い点を見つけているように見えますが、その実、前職への不満という「過去」に焦点が当たっており、会社に「貢献したい」という「未来」への意志はあまり感じられません。
私たちの脳は、過去の経験から学び、未来を予測し、そして「今」行動することで、未来を形作っていきます。しかし、もし、常に過去の出来事や、他人の評価に囚われてしまうと、私たちは「今」できること、「今」変えられることに、目を向けることができなくなってしまうのです。
■「甘え」を「自律」に変えるための具体的なステップ
ここまで、他責思考や甘えに繋がる思考のクセについて、いくつか見てきました。では、具体的に、どうすれば、これらのクセを克服し、もっと主体的に、前向きに行動できるようになるのでしょうか?
まずは、「自分の感情を客観視する」ことから始めましょう。何かうまくいかないことがあった時、まず深呼吸をして、「今、自分はどんな感情になっているだろう?」と自問自答してみてください。怒り、悲しみ、不安、焦り…どんな感情でも構いません。その感情を、まずは「そういう感情なんだな」と受け止めることが大切です。
次に、「その感情の根源にあるものは何か?」を考えてみましょう。「なぜ、自分は今、〇〇という感情になっているのだろう?」その原因が、もし「あの人のせいだ」とか、「あの状況のせいだ」と感じるのであれば、その「あの人」や「あの状況」について、客観的に分析してみましょう。
例えば、仕事でミスをしてしまったとします。ここで、「あー、もうダメだ、私が悪かったんだ」とすぐに自分を責めてしまうのも、ある意味「他責」に似た思考です。そうではなく、「なぜ、このミスが起きてしまったのか?」「具体的に、どのプロセスで、どのような原因があったのか?」を、感情を抜きにして、事実を整理して考えていくのです。
その際、先ほども触れた「確証バイアス」に注意が必要です。私たちは、一度「自分のせいだ」と決めつけてしまうと、それ以降、その「自分のせいだ」という証拠ばかりを探してしまうことがあります。そうならないために、できるだけ多角的な視点から、原因を分析することが重要です。
そして、原因分析ができたら、次は「では、これからどうすれば良いか?」を考えます。ここが、他責思考から主体性への転換の最も重要なポイントです。
「もし、あの時、〇〇という行動をとっていたら、結果は変わっていただろうか?」
「もし、〇〇という情報を持っていたら、違う判断ができたのではないか?」
「今後、同じような状況になったら、具体的にどのような行動をとれば、より良い結果に繋がるだろうか?」
このように、「もし〜だったら」という仮定の話から、「では、今後どうすれば良いか?」という具体的な行動計画へと繋げていくのです。
■「自己責任」を「自己実現」のチャンスに変える
「自己責任」という言葉を聞くと、なんだか重苦しく感じる人もいるかもしれません。しかし、これは、決して「すべて自分の責任だ!一人で抱え込め!」ということではありません。むしろ、これは、「自分の人生を、自分でコントロールできる力がある」という、素晴らしい可能性を秘めた言葉なのです。
自分の行動の結果に責任を持つということは、裏を返せば、自分の行動次第で、望む未来を創り出すことができる、ということです。
例えば、あなたが新しいスキルを習得したいと思ったとします。もし、他責思考に陥っていると、「教えてくれる人がいないから」「時間がないから」「自分には才能がないから」など、様々な「できない理由」が次々と浮かんできてしまうでしょう。
しかし、主体的な思考に切り替えると、状況は一変します。「教えてくれる人がいないなら、自分で調べて学ぶ方法を探そう」「時間がないなら、毎日30分でも良いから、学習する時間を確保しよう」「才能がないと思うなら、才能がある人はどうやって努力しているのかを研究して、自分も真似てみよう」と、前向きな行動へと繋がっていくのです。
この「自己責任」の精神は、日々の小さな選択の積み重ねによって、育まれていきます。朝、目覚まし時計が鳴った時に、「もう少し寝たいな…」と二度寝を選ぶか、「よし、今日は早く起きて、朝活をしよう!」と決断するか。ランチに何を選ぶか。仕事で、指示されたことだけをこなすか、それとも、プラスアルファで何かできないかを探すか。
これらの小さな選択の一つ一つが、あなたの未来を形作っていきます。そして、その選択の結果に対して、責任を持つことで、あなたは「自分は自分の人生の主役なんだ」という感覚を、より強く掴んでいくことができるのです。
■「未来」に投資する「今」の行動
最後に、読者の皆さんへ、伝えたいことがあります。
私たちは皆、無限の可能性を秘めています。どんな状況に置かれていても、どんな困難に直面しても、それを乗り越え、より良い未来を創り出す力を持っています。
「あの人が悪い」「あの状況が悪い」と、外に原因を求めるのは、簡単です。しかし、それは、まるで、自分の人生という名の船の舵を、誰かに委ねてしまっているようなものです。
「自分ならできる」「自分ならどうにかできる」と、自分の内なる声に耳を澄ませ、行動を選択すること。それは、決して一人で抱え込むことではなく、むしろ、自分の人生という名の船を、自分で力強く操縦していく、ということです。
もし、今、あなたが「うまくいかないな」と感じているなら、それは、もしかしたら、あなた自身が、その状況を「どうにかする」ための、新たな一歩を踏み出すチャンスなのかもしれません。
「あの時、こうしておけばよかった…」という後悔は、過去の遺物です。
「〜だったら、〜なのに…」という願望は、現状維持の合図です。
大切なのは、「今、この瞬間」に、あなたが「何をできるか」ということです。
例えば、今日から、ほんの少しだけ、意識を変えてみてください。
何か問題が起きたら、まず「原因はなんだろう?」ではなく、「次にどうすれば良いだろう?」と考えてみる。
誰かのせいにしたくなったら、一呼吸おいて、「自分ならどうする?」と問いかけてみる。
そして、その考えたことを、ほんの少しでも、行動に移してみる。
その小さな一歩が、あなたの未来を、そしてあなたの人生を、大きく変える原動力となるはずです。
あなたの「主体的な行動」が、あなたの「自己責任」が、あなた自身の「自己実現」へと繋がることを、心から願っています。

