VCの居眠り、ゴースティングも!創業者たちが語る資金調達の悪夢体験談

テクノロジー

■ピッチの舞台裏:VCの居眠りから見えてくる、スタートアップ資金調達のリアル

テクノロジーの世界で日々進化するイノベーションの最前線に立つ起業家たち。彼らが目指すのは、自らのアイデアを形にし、世界を変えるようなプロダクトやサービスを世に送り出すことです。その夢を実現するための大きな壁の一つが、資金調達、特にベンチャーキャピタリスト(VC)からの資金獲得です。このプロセスは、しばしば「通過儀礼」とも言われますが、その裏側には、驚くべき、そして時には笑ってしまうような、しかし当事者にとっては切実な「悪夢のような体験談」が数多く存在することが、最近SNSで大きな話題となっています。

発端は、インフルエンサーとしても知られる起業家、グレッグ・アイゼンバーグ氏がSNSに投稿した、あるVCファームでのピッチ体験談でした。なんと、12名ものVCが参加する1500万ドル規模のシリーズA資金調達の面談中、主要な投資家の一人が30分以上も居眠りをしていたというのです。さらに驚くべきは、その事実に誰も触れることなく、会議は淡々と進行したという事実。この驚愕のエピソードは、多くの創業者たちの共感を呼び起こし、SNS上では「私も同じような経験をした」「それどころか、もっとひどい目に遭った」といった、同様の苦い経験談が次々と共有される事態となりました。

VCがピッチ中に居眠りするというのは、単なる一時的な疲労によるうたた寝レベルの話ではないようです。完全に熟睡してしまうケースも少なくなく、あのZyngaの創業者、マーク・ピンカス氏も、あたかも映画のワンシーンのような状況だったと語っています。彼は、週末の終わりにバーニーというキャラクターが眠り込んでしまう映画「Weekend at Bernie’s」になぞらえ、友人に「このままプレゼンを続けるべきか?」と尋ねたところ、「続けろ」という返答があったというエピソードを共有しています。想像してみてください。あなたが情熱を傾けるビジネスプランを熱弁している横で、投資の決定権を持つ人物が深い眠りに落ちている。その心中は、いかばかりか。しかし、不思議なことに、こうした状況でも最終的に投資が決まったというケースが複数報告されているのです。

HRスタートアップWayUpの共同創業者であり、現在は有力VCであるFirst Round Capitalのパートナーを務めるリズ・ウェッセル氏の体験談は、まさにこの不思議さを物語っています。彼女は2015年のシリーズA資金調達の際、著名なVCの一人が居眠りをし、もう一人は不機嫌そうな顔をしていたにもかかわらず、面談からわずか2時間後にタームシート(投資条件通知書)が送られてきたと述べています。最終的に彼女たちのチームはその投資を断ったそうですが、この話を聞いて、一体何が判断基準になったのだろうか?と首を傾げざるを得ません。

こうしたVCの「居眠り常習犯」とも言える状況に対し、元a16zのパートナーであるアリアナ・シンプソン氏は、「VCは大丈夫か?narcolepsy(ナルコレプシー:睡眠発作)が蔓延しているようだ」とユーモラスながらも鋭い指摘をしています。この言葉には、単なる疲労だけでなく、もっと根深い問題が潜んでいるのではないか、という示唆が含まれているのかもしれません。

しかし、VCとの資金調達における苦い経験は、居眠りだけにとどまりません。さらに腹立たしいのは、タームシートに署名した後、直前になって投資を撤回したり、連絡を一切絶って(ゴースティング)資金を送金しなかったりするケースも後を絶たないことです。まるで、都合の良い時だけ現れる幽霊のような存在。それだけならまだしも、さらに悪質とも言えるのは、そうしたVCが、あたかも投資先企業であるかのように、創業者に会社の進捗報告を求めたり、自分たちを「紹介者」として利用しようとしたりすることです。ある創業者は、VCが買収後の利益の一部まで要求してきたと訴える始末。まるで、投資する前に企業の魂を抜き取ろうとしているかのようです。

Uberの共同創業者であるトラビス・カラニック氏のエピソードも、その切迫感と創業者の粘り強さを物語っています。彼は、VCが面談中にこっそり抜け出そうとするのを見つけ、なんと車まで追いかけて、助手席に乗り込み、そこでピッチを続けたというのです。そこまでしてでも、自らのビジネスに投資してもらいたい、その情熱と執念が伝わってくるエピソードです。

もちろん、全てのVCとの経験がネガティブなわけではありません。素晴らしい経験をしたという声や、特定の投資家との間に築かれた、まるで恋愛物語のような「ラブストーリー」と呼べるようなポジティブなエピソードも、数多く共有されています。ほとんどのVCは勤勉で、スタートアップの成功を心から願い、真摯にサポートしようと努力しています。会議中に居眠りなんて、彼らにとっては論外でしょう。しかし、こうした否定的な経験談があまりにも一般的であるからこそ、ピンカス氏は「創業者たちがVCの愚かな行動を非難することを恐れなくて済むこの瞬間を、私は愛している」と、ある種の解放感を語っているのです。

中でも、最も衝撃的であり、業界の構造や偏見を浮き彫りにしたのが、Cloudflareの創業者、マシュー・プリンス氏が明かしたエピソードです。彼は、あの名門VC、Sequoia Capitalのあるパートナーが、Cloudflareの共同創業者兼COOであるミシェル・ザトリン氏に対して、「女性がセキュリティインフラ企業を率いることなどできないだろう」という、信じがたい偏見に基づいた理由で投資を見送ったことを暴露しました。現在、時価総額870億ドルという驚異的な企業へと成長したCloudflareの現状を鑑みれば、その判断がどれほど時代遅れで、いかに人材の本質を見誤っていたかが明らかです。Sequoiaのショーン・マグワイア氏は、ザトリン氏を常に尊敬していたと述べ、そのパートナーの名前を尋ねましたが、プリンス氏は残念ながら明言を避けました。しかし、この事実は、たとえ一流のVCであっても、根深い性別による偏見から自由ではないことを突きつけます。

さらにプリンス氏は、もう一つ衝撃的な話を続けました。著名な投資家であるヴィノッド・ホスラ氏が、投資の申し出をした後、創業者であるプリンス氏に対して、「共同創業者を解雇し、彼らの株式を奪うべきだ」と、まるで冷酷なビジネスの勧告とも取れるような示唆をしたと、プリンス氏は記憶していると語りました。プリンス氏自身は、これを「人格を試すテストだったのかもしれない」と、ある種の皮肉を込めて捉えつつも、あまりにも無礼で、受け入れがたい提案だったため、二度と話すことはなく、ホスラ氏の電話番号をブロックしたとのことです。プリンス氏は、ホスラ氏について「非常に賢く、機転が利き、驚異的な投資家であることは間違いない。しかし、私が一緒に働きたいとは思わない性格だ」と、その能力と人間性との間に明確な線引きをしています。もちろん、記憶というのは曖昧なもので、ホスラ氏が実際に何を言ったのか、どのような意図だったのか、そして彼自身がどう記憶しているのかは不明です。しかし、このような有力VCに関する率直な発言が、業界内部から飛び出すこと自体が、多くの人々にとって驚愕でした。プリンス氏のこうした率直さは、彼が「FUマネー」(金銭的な余裕があるため、相手の意向に反してでも自分の意見を貫ける力)を持っていることの表れだと指摘されています。つまり、彼はもはやVCからの資金調達に過度に依存する必要がない、という状況にあるからこそ、本音を語ることができるのです。

一方で、プリンス氏の体験談の中には、VCを一方的な悪役として描いていないものもありました。彼は、あのa16zの共同創業者、マーク・アンドリーセン氏との短い顔合わせを予定していましたが、アンドリーセン氏はなんと、投資チーム全員を連れて現れ、プリンス氏を「感心させる」ための準備をしていたそうです。しかし、準備不足だったプリンス氏は、アンドリーセン氏を感心させることができず、結果として送られてきた断りの手紙は、今では額装して飾っているというのです。アンドリーセン氏やa16zとの面談で同様の経験をしたという声も、後から寄せられてきました。これは、VC側も真剣に投資対象を見極めようとしている、しかしそのアプローチが非常に高度で、創業者はそれに対応できるだけの準備と力量が求められる、という現実を示唆しています。

数ある興味深い話の中でも、特にユニークだったのが、創業者から投資家へと転身したジュリー・フレドリクソン氏の体験談です。彼女は、あるVCファームのオフィスに到着する前に、VCのアソシエイトから、窓の外に見える岩の形状が男性器のように見えるため、ファームの投資家たちはそれを知らずにいるだろう、と冗談めかした警告を受けたというのです。「そのファームは、私の心の中で永遠に『ディックロック・ベンチャーズ』と記憶されるだろう」と彼女は書き記しています。これは、VC業界の男性中心的な文化や、そうした状況に無自覚な人々への、皮肉なメッセージとして受け取れるかもしれません。

こうしたシリコンバレーのVCを厳しく批判する声が上がる一方で、創業者たちは海外のVCに関する事例も共有しています。さらには、一部のVCは、リミテッドパートナー(LP)投資家へのピッチについても語っています。これらのSNS上のスレッドは、単に笑えるエピソード集に留まらず、資金調達プロセスがいかに不透明であり、パワーバランスがいかに現実のものであり、そして創業者が個人的に経験する率直な物語が、業界が公に認めるよりもはるかに一般的であることを浮き彫りにしました。アイゼンバーグ氏は、これらの話から得られる教訓をこうまとめています。「もし今、資金調達をしているなら、知っておくべきことは、全ての創業者がこのような物語を持っているということだ。プロセスは奇妙で、パワーバランスも奇妙だ」。

この言葉は、VCとの資金調達という、一見華やかな世界に隠された、生々しい現実を的確に表現しています。しかし、同時に、このような「奇妙さ」や「パワーバランスの歪み」を乗り越えた先に、夢を形にするための扉が開かれることも忘れてはなりません。そして、もう一つの教訓として、アンドリーセン氏があなたとの面談に同意した場合、それは彼が本気であなたのビジネスに取り組むことを意味する、という点も挙げられています。これは、偉大な起業家や投資家は、その時間とエネルギーを無駄にしない、という事実の裏返しであり、彼らに認められるほどのビジネスプランと、それを実現する情熱があれば、道は開けることを示唆しています。

テクノロジーの進化は、私たちの生活を豊かにし、未来を切り開く可能性を秘めています。しかし、そのイノベーションの源泉となるスタートアップが、資金調達という過酷なプロセスに晒されている現実もまた、見過ごすことはできません。VCとの関係性は、時に「悪夢」となり、時に「ラブストーリー」となる。その両極端な体験談が交錯するSNS上の議論は、まるで壮大なドラマのようです。このドラマの真ん中にいる起業家たちは、それぞれの情熱と知恵、そして時にはユーモアを武器に、自らの未来を切り拓こうとしています。彼らの挑戦を、私たちは温かく、そして時には厳しく見守り、応援していく必要があるのでしょう。そして、私たち自身も、テクノロジーの進化を深く理解し、その恩恵を最大限に享受しながら、より良い未来を共に創造していく。それが、このテクノロジー時代に生きる私たちに課せられた、静かで、しかし確かな使命なのかもしれません。

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