■自分の人生のハンドルを握り直そう
なんだかうまくいかないな、と感じることって、人生にはつきものですよね。仕事でミスをしてしまった時、人間関係でちょっとしたすれ違いが起きた時。そんな時、つい「あいつのせいだ」「あの状況が悪かったんだ」なんて、自分の外側に原因を探してしまうこと、ありませんか? あるいは、恋愛や婚活で、理想の相手になかなか出会えなかったり、関係が長続きしなかったりする時。これもまた、相手や状況のせいにしてしまいたくなる誘惑に駆られる場面かもしれません。「あの人は私のことを理解してくれなかった」「もっと条件の良い人がいれば…」なんて。
でも、ちょっと立ち止まって考えてみましょう。もし、いつも「誰かのせい」「何かのせい」ばかりにしていたら、自分の人生のハンドルを、誰か他の人に握らせているようなものだと思いませんか? ハンドルを握っている人が自分じゃないなら、どこへ向かうかも、いつ止まるかも、自分で決めることはできません。それは、まるで autopilot で飛行機に乗っているようなもの。目的地に着くまでは安心かもしれませんが、もし予期せぬトラブルが起きた時、自分で対処する術を持たないことになります。
もちろん、社会で生きていれば、自分ではどうしようもない出来事に直面することもあります。理不尽な出来事や、他人の悪意に触れることもあるでしょう。そうした時に、感情的になってしまうのは、人間として自然な反応です。しかし、その感情をずっと抱え続け、全てを他人のせいにしていると、不思議なことに、状況はなかなか好転しないものです。むしろ、さらにネガティブな状況を引き寄せてしまうことさえあります。
■「他責思考」って、具体的にどんなもの?
ここで、少し専門的な話も交えながら、「他責思考(たせきしこう)」について掘り下げてみましょう。他責思考というのは、文字通り、自分の問題や失敗の原因を、自分以外のもの(他人、環境、運命など)に求めてしまう考え方のことです。
例えば、恋愛や婚活の場面で、こんな会話を想像してみてください。
「彼(彼女)と別れることになったんだけど、もう、本当に最悪だった。私のこと全然わかってくれなくて、私の気持ちなんて全然考えてくれなかったんだ。私ばっかり我慢してたのに、結局別れることになった。どうして私ばっかりこんな目に遭うんだろう?」
これは、一見すると、相手に問題があったように聞こえるかもしれません。しかし、ここで大切なのは、「なぜ、その関係がうまくいかなかったのか」という原因を、相手だけに求めている点です。もし、自分にも改善できる点があったとしたら? 自分の伝え方に問題があったのかもしれない。相手の気持ちを想像する力が足りなかったのかもしれない。あるいは、そもそも、自分と相手の価値観が合っていなかったのに、それを無理に合わせようとしていたのかもしれません。
このような、あらゆる問題の原因を他人に押し付けるような考え方は、実は、本人が無意識のうちに自分を守るための「心理的防衛メカニズム」として働いている場合があるんです。特に、過去に傷ついた経験があったり、自分に自信が持てなかったりする人は、自分の非を認めることで、さらに傷ついたり、無力感を感じてしまうことを恐れています。そこで、「私が悪かった」と認める代わりに、「相手が悪かった」「状況が悪かった」とすることで、心の安全を保とうとするのです。これは、本人にとっては、無意識のうちに、自分を守るための賢い(?)方法なのかもしれません。
■なぜ「他責思考」は、あなたの人生を縛り付けるのか
さて、この「他責思考」が、あなたの人生、特に恋愛や婚活という、人間関係が大きく関わる領域で、どのように作用するのかを考えていきましょう。
まず、他責思考が強いと、どうしても相手を一方的に批判する傾向が強くなります。先ほどの例のように、問題が起きた時に、相手の欠点ばかりに目がいってしまうのです。もちろん、相手に非がある場面もあります。しかし、関係がうまくいかない時というのは、どちらか一方だけに原因がある、ということは稀です。双方が何かしら、関係を改善するための努力を怠っていたり、誤解が生じたりしているものです。
他責思考の人は、この「双方が何かしら…」という部分に目を向けにくい。なぜなら、「私が悪かった」と認めることに抵抗があるからです。そして、相手を批判し続けるということは、相手との間に壁を作り、溝を深めることになります。結果として、関係は徐々に冷え込み、うまくいかなくなる可能性が高まります。
婚活の場面で考えてみましょう。もし、あなたが「私と付き合ってくれなかった人は、みんな見る目がなかったんだ!」と常に思っているとします。そうすると、どんな相手と出会っても、どこかで相手を見下したり、粗探しをしたりしてしまうかもしれません。相手の立場に立って「なぜ、この人は私を選んでくれなかったのだろう?」「私にどんな改善点があるのだろう?」と考えるのではなく、「相手が私を理解できなかったんだ」という結論で終わらせてしまう。これでは、どれだけ多くの人と出会っても、本当の意味で心を通わせられる相手を見つけることは難しくなるでしょう。
さらに、他責思考は、あなたの成長の機会を奪います。失敗から学ぶ、というのは、人間が成長するための最も重要なプロセスの一つです。しかし、失敗の原因をすべて他人のせいにしていたら、あなたは決してその失敗から学ぶことができません。同じ過ちを繰り返したり、似たような状況に陥ったりしても、「またあの時と同じだ。やっぱり、あの時のあの人が悪かったんだ…」と、永遠に同じ場所をぐるぐると回り続けることになります。
■「他責思考」のパートナーを見抜くサイン
では、もしあなたが真剣にパートナーを探している、あるいは、すでにパートナーがいる場合、相手が「他責思考」の傾向が強いかどうか、どうやって見抜けば良いのでしょうか? これは、婚活の場面で特に重要になってくるかもしれません。
一つの分かりやすいサインは、「過去の恋愛についてどう語るか」です。もし、相手が過去の恋人との別れについて、ことごとく「相手が悪い」「自分は全く悪くない」と話すのであれば、注意が必要です。例えば、「あいつが浮気したから別れた」「俺の気持ちなんて全然わかってくれなかった」「あいつのせいで、俺はこんなに傷ついたんだ」といった言葉ばかりが出てくる場合。もちろん、実際に相手に非があったケースもあるでしょう。しかし、もし、どんな恋愛でも、常に相手だけを悪者にして語るのであれば、それは相手が自分の非を認めず、無意識のうちに責任を他人に転嫁している可能性が高いと言えます。
なぜなら、健全な人間関係というのは、お互いの歩み寄りや、時には譲り合い、そして、うまくいかなかった時には、自分にも改善点があったのではないかと省みることから成り立っているからです。もし、相手が過去の恋愛を振り返る際に、一度も「自分にも至らなかった点があったかもしれない」という視点を持たないとすれば、それは、未来のあなたとの関係においても、同じようなパターンを繰り返す可能性がある、ということを示唆しています。
もちろん、これは相手を一方的に断罪するためのものではありません。あくまで、相手との関係をより深く理解するための一つのヒントです。もし、相手の過去の恋愛の話を聞いて、少しでも「あれ?」と感じることがあれば、その関係性を慎重に見極める必要があるかもしれません。
■「他責思考」から抜け出すための、確実な一歩
さて、ここまで「他責思考」が、いかに私たちの人生、特に人間関係にネガティブな影響を与えるかを、客観的な視点から見てきました。でも、安心してください。これは、決して変えられない性質ではありません。誰でも、意識と努力次第で、この思考パターンから抜け出し、より主体的に、より前向きに人生を歩むことができるのです。
では、具体的にどうすれば良いのでしょうか? まず、最初にやるべきことは、「自分の感情や行動を客観的に見つめ直す」ことです。
例えば、何かうまくいかなかった時に、すぐに「誰かのせいだ」と感じてしまったとします。その時、深呼吸をして、一旦立ち止まってみましょう。「私は今、何に対して怒っているのだろう?」「なぜ、私はこの状況を『誰かのせい』だと感じてしまったのだろう?」。そして、さらに一歩踏み込んで、「この状況で、私にできることは何があったのだろう?」「もし、相手の立場だったら、どう感じただろう?」。このように、自分自身の内面に問いかける習慣をつけることが大切です。
これは、決して自分を責めるためではありません。「自責思考」という言葉を聞くと、自分を責めすぎることだと誤解されがちですが、そうではありません。ここで言う「自責思考」とは、「問題の原因を、自分の中にも見出そうとする柔軟な考え方」のことです。原因を自分の中にも見出すことで、初めて、自分がコントロールできる範囲で、状況を改善するための具体的な行動が見えてくるのです。
例えば、仕事でプレゼンがうまくいかなかったとします。他責思考なら、「あの資料がわかりにくかったんだ」「上司がもっとサポートしてくれればよかったのに」で終わってしまいます。しかし、自責思考を取り入れると、「資料の構成に問題があったのではないか?」「もっと練習をすれば、もっと自信を持って話せたかもしれない。次回のプレゼンでは、この点を改善しよう」という具体的な次のステップが見えてきます。
■「自己責任」という名の、自由へのパスポート
「自己責任」という言葉を聞くと、なんだか重苦しい響きがあるかもしれません。でも、考えてみてください。もし、あなたの人生のハンドルを、あなたがしっかりと握っているとしたら、どうなるでしょう?
それは、あなたが、自分の人生の「主人公」になれるということです。誰かのせいにする必要はありません。誰かの評価を気にする必要もありません。あなたが、自分の意志で、行きたい方向へ進むことができるのです。
恋愛や婚活においても、これは同じです。もし、「私を愛してくれない相手が悪い」と思っていると、あなたは永遠に「愛される」という他人の行動に依存することになります。しかし、「どうすれば、私はもっと魅力的な人間になれるだろう?」「どうすれば、相手とより深く心を通わせることができるだろう?」と、自分自身に焦点を当てることで、あなたは「愛する力」を育むことができるようになります。そして、そうすることで、自然と、あなたを愛してくれる人、あなたと心を通わせられる人と出会える可能性が高まっていくのです。
もちろん、最初からすべてがうまくいくとは限りません。失敗することもあるでしょう。後悔することもあるでしょう。でも、その経験は、すべてあなたの成長の糧となります。なぜなら、あなたが自分で決断し、自分で行動した結果だからです。その経験から学び、次に活かすことができる。これが、「自己責任」のもたらす、最も素晴らしい効果なのです。
■今日から始められる、前向きな行動へのシフト
「他責思考」から「自己責任」へのシフトは、一朝一夕にできるものではありません。しかし、今日から、ほんの少し意識を変えるだけで、あなたの人生は確実に良い方向へ動き始めます。
まずは、日常の中で、「これは誰かのせいではないか?」と感じた時に、一度立ち止まって、「私にできることは何だろう?」と考えてみてください。たとえ、それが小さなことでも構いません。例えば、部屋が散らかっていると感じた時に、「誰か片付けてくれればいいのに」と思うのではなく、「じゃあ、今から5分だけ片付けよう」と行動してみる。
恋愛や婚活においても、うまくいかないことがあった時に、「相手がもっとこうしてくれれば…」と思うのではなく、「自分からもっと相手に歩み寄ってみよう」「自分の良いところをもっと相手に伝えてみよう」と、主体的な行動を試みてみてください。
もし、過去の恋愛で傷ついた経験があるなら、それを「あの人のせいだ」といつまでも抱え続けるのではなく、「あの経験から、私は何を学べたのだろう?」と、前向きに捉え直してみましょう。その学びが、きっとあなたの次の恋愛を、より豊かなものにしてくれるはずです。
人生は、あなたのものです。そのハンドルを、あなた自身がしっかりと握り、あなただけの素晴らしい航海に出かけましょう。誰かのせいにしている間は、あなたはただの乗客です。でも、自分の責任でハンドルを握れば、あなたは間違いなく、この人生という航海の船長になれるのですから。

