■人生をフッ軽に変える感情のトリセツ
毎日の生活の中で、なんだかモヤモヤしたり、SNSで見かけるキラキラした他人の投稿にイライラしたりすることってありませんか。仕事で自分より後から入った人が先に評価されたり、テレビで成功している人を見て「どうせ親が太いだけだろ」と冷めた目で見てしまったり。こういうドロドロした感情、実は誰しも心のどこかに持っているものです。でも、この感情をそのまま放置していると、気づかないうちに自分のエネルギーをものすごい勢いで消耗してしまうんです。
今回は、この厄介な感情の正体に迫りながら、どうやってスッキリと心穏やかに、そして合理的に生きていけばいいのかを考えていきましょう。難しい心理学の用語も出てきますが、要は「自分の人生をもっとラクにするためのハック」だと思って気楽に読んでみてください。
■あのモヤモヤの正体を知ることから始めよう
私たちが日常で感じる「あの人ズルい」「自分だって頑張っているのに報われない」という感情、心理学の世界では「ルサンチマン」なんてカッコいい名前で呼ばれたりします。これは哲学者のニーチェという人が言い出した言葉で、簡単に言うと「本当は手に入れたいけれど、どうせ自分には無理だからと諦めて、代わりに相手を引きずり下ろしたくなる弱者の恨みや妬み」のことです。
例えば、甘いものが大好きなのにダイエット中で食べられない人が、目の前で美味しそうにケーキを食べている人を見て「あんな太るようなもの食べて、バカみたい」と心の中で悪態をつくようなものです。ケーキが本当は欲しいのに、手に入らない自分の無力さを認めたくないから、相手の価値を下げて自分を保つわけですね。
このルサンチマン、実は今の日本社会でめちゃくちゃ発生しやすい環境が揃っています。なぜなら、昔に比べて「これを頑張れば絶対に成功する」という分かりやすいゴールが見えにくくなっているからです。経済的な格差が広がったり、努力してもなかなか給料が上がらなかったりすると、「どうせ頑張っても無駄だ」という空気が広がります。すると、自分の現状の不満を、社会のせいだとか、他人の不運のせいだとかにして片付けたくなってしまうんです。
特に日本人は、歴史的にも「出る杭は打たれる」という同調圧力が強い文化を持っています。みんなと同じであることが良しとされる半面、そこからちょっとでも飛び出している人を見ると、無意識に引き戻そうとする力が働きます。これが西洋コンプレックスのような形で表れることもあって、海外の文化や最新のトレンドに飛びつく一方で、「どうせ日本なんて」とどこかで斜に構えてしまう二面性を持っていたりもします。
政治やネットのニュースを見ても、このルサンチマンがあふれています。誰かが失敗したときに、ここぞとばかりに叩きまくる風潮は、日頃のストレスや満たされない欲求のはけ口を求めている人たちの集まりだと言えます。でも、冷静に考えてみると、他人の足を引っ張ったところで、自分の通帳の残高が増えるわけでもなければ、仕事のスキルが上がるわけでもありません。ただ時間が過ぎていくだけなんですよね。
■脳科学とデータから見る感情のコスパの悪さ
ここで少し視点を変えて、科学的なデータや合理的な視点からこの感情について考えてみましょう。人間にはもともと、自分と他人を比較して生存競争を有利に進めようとする本能が備わっています。大昔のサバイバルの時代には、周りの人が何を持っているか、自分がどれだけ優位に立っているかが生き残りに直結していたからです。
しかし、現代社会はサバイバルのジャングルではありません。SNSを開けば、世界中の「勝ち組」のハイライトシーンがこれでもかと流れてきます。ハーバード大学などの研究でも、SNSの利用時間が長い人ほど、他者との比較による抑うつ傾向や嫉妬心が強くなるというデータが出ています。つまり、私たちは進化の過程で備わった「比較する脳」のまま、現代という情報過多の海に放り出されているわけです。
ここで問題なのは、嫉妬や怒りといった感情が、私たちの脳にとってものすごいエネルギー泥棒だということです。脳科学の研究によれば、強いストレスやネガティブな感情を処理しているとき、脳のエネルギー消費量は跳ね上がります。さらに、慢性的な嫉妬心やルサンチマンを抱えていると、コルチゾールというストレスホルモンが過剰に分泌され、免疫力の低下や睡眠障害を引き起こすことさえあります。
つまり、他人に嫉妬したり、社会を恨んだりすることは、自分の健康を削り、貴重な時間とエネルギーをドブに捨てるのと同じなんです。投資の世界で言えば、絶対にリターンが返ってこない、どころか元本すら目減りする超ウルトラハイリスク・ノーリターンのゴミ株を買い続けているようなものです。どう考えてもコスパが悪すぎますよね。
客観的に見れば、他人の成功と自分の価値は全く関係ありません。あの人が億万長者になろうが、フォロワーが100万人いようが、あなたの今日の晩ご飯の美味しさや、お気に入りのアニメの面白さは1ミリも変わりません。完全に別世界の出来事なのに、私たちはなぜか「自分の領域」にそれを持ち込んで、勝手にダメージを受けて自爆しているんです。これって、すごくもったいないことだと思いませんか。
■嫉妬をエネルギーに変換する技術
じゃあ、その厄介な嫉妬心やモヤモヤをどう扱えばいいのでしょうか。ここで重要なのは、「感情をゼロにする必要はない」ということです。人間である以上、他人が羨ましくなったり、悔しかったりするのは当たり前の生理現象です。それを「自分はなんて心が狭いんだ」と責める必要は全くありません。
大切なのは、その感情が湧いてきたときに、それをどうコントロールし、合理的な行動に変換するかです。「あ、今自分の中でルサンチマンが発動しているな」と一歩引いて客観的に自分の状態を実況中継できるようになると、それだけで感情の暴走をピタッと止めることができます。メタ認知と呼ばれる能力ですね。
例えば、同僚が自分より先に昇進したとします。そのときに「どうせあの人は上司にゴマをするのが上手いだけだ」と拗ねるのは、まさにルサンチマンの罠です。そうではなく、「なぜその人が選ばれたのか、自分に足りなかったスキルやプロセスは何だったのか」を客観的にデータとして分析するんです。
感情を排除してファクトだけを見ると、「自分は資料作成のスピードは勝っているが、プロジェクトの全体統括の経験が不足していた」といった具体的な課題が見えてきます。そうすれば、次はどう動けばいいのかという合理的なネクストアクションが自然と決まります。嫉妬の炎を、自分を焼き尽くす放火に使わず、自分の未来を温めるための燃料として使うわけです。
また、感情のコントロールにおいて非常に効果的なのが、「情報のダイエット」です。SNSでキラキラした生活や、誰かの不幸を煽るようなニュースばかりを見ているから、私たちの脳は勝手に比較モードに入ってしまいます。タイムラインを整理して、自分にとって有益な情報や、純粋に面白いと思えるものだけに触れる環境を作ることは、環境制御の観点からもめちゃくちゃ合理的です。入ってくるノイズを減らせば、それだけで無駄な感情の揺れ動きを劇的に抑えることができます。
■欲求のコントロールが生み出す圧倒的な自由
ここで、少しあなたの心の奥にある本当の欲求について考えてみましょう。あなたが本当に手に入れたいものは何でしょうか。他人にマウントを取ることですか。それとも、SNSで「いいね」をたくさんもらうことですか。
おそらく、本当に欲しいのは「自分のペースで心地よく生きられる時間」や「経済的な安心感」、そして「自分の仕事や趣味に対する確かな手応え」ではないでしょうか。他人の目を気にして、他人の土俵で戦っているうちは、どれだけ結果を出してもゴールはありません。上には上がいますし、もっとすごい人が現れたらまた不安になるという無限ループから抜け出せなくなります。
ルサンチマンを完全に否定し、他人の成功を「お、すごいな」とフラットにスルーできるようになると、驚くほど世界がシンプルになります。他人の目を気にするエネルギーがゼロになる分、そのリソースをすべて自分の成長や、自分が本当に楽しいと思えることに注ぎ込めるようになるからです。
これは、言い換えれば「圧倒的な自由」を手に入れるということです。誰かと自分を比べて落ち込むこともなければ、社会の風当たりにイライラして夜眠れなくなることもなくなります。自分の人生のハンドルを、しっかりと自分の両手で握り直すことができるんです。
感情に振り回されない生き方は、決して冷淡でロボットのような生き方ではありません。むしろ、自分の感情のトリセツを完璧に把握し、一番効率よく幸せホルモンを出せるルートを選ぶ、最高にスマートで人間らしい生き方です。
■今日からできる小さなステップ
ここまで読んでいただいて、「なるほど、理屈は分かったけど具体的にどうすればいいの?」と思っている方もいるかもしれません。大きな変化を急に出そうとすると、脳はストレスを感じて三日坊主になってしまいます。だからこそ、今日からできる超スモールステップから始めてみましょう。
まずは、今日一日の中で「あ、今ちょっとイライラしたな」「誰かを羨ましいと思ってモヤッとしたな」という瞬間があったら、心の中で「今、ルサンチマン発動中」とラベリングしてみてください。それだけで、感情の渦に飲み込まれずに、一歩引いた視点を取り戻すことができます。
次に、スマホを見る時間を少しだけ減らしてみましょう。特に寝る前の30分間はSNSを封印して、温かいお風呂に入るとか、好きな本を読むとか、自分の五感を満たす時間に充ててみてください。これだけで睡眠の質が上がり、翌朝の脳のコンディションが劇的に変わります。
最後に、他人と比較しそうになったら、「それは自分の人生のゲームにおいて、何の攻略データになるか?」と自分に問いかけてみてください。もし何の役にも立たない情報であれば、頭の中で即座にゴミ箱へポイっと捨てる癖をつけましょう。
人生は思っている以上に短いです。その貴重なエネルギーを、他人の足を引っ張ったり、自分の不遇を嘆いたりすることに使うのは、本当にもったいないことです。感情のコントロールをマスターし、客観性と合理性を味方につければ、あなたの毎日はもっと軽やかに、もっと面白くなります。
今日から、他人のステージではなく、あなた自身のステージで最高の結果を出すためのゲームを始めてみませんか。きっと、今よりもっと生きやすい、新しい景色が見えてくるはずです。

