■SNSを見ているとなんだかモヤモヤしませんか
毎日スマホを開けば、どこかの誰かのキラキラした日常が目に飛び込んできますよね。あいつはあんなに楽しそうなのに自分はどうなんだとか、同期のあいつが先に昇進したとか、そういう情報が勝手に流れてくる時代です。タイムラインをスクロールする指がふと止まって、なんとも言えないモヤモヤした感情が胸のあたりに広がった経験はありませんか。あのモヤモヤの正体はいったい何なのでしょうか。今回は、私たちが日常的に感じてしまうそのドロドロした感情の正体に迫りながら、それをどうやって上手にコントロールしていけばいいのかについて、感情論を一切抜きにして、科学的な事実や合理的な視点からじっくり考えていきたいと思います。
難しい言葉はなるべく使わずに、普段の雑談をするような感覚で読み進めてもらえるように書いていきますので、肩の力を抜いてリラックスして読んでみてくださいね。きっと、明日からの毎日の気分が少しだけ軽くなるヒントが見つかるはずです。
■他人と自分を比べてしまう心の仕組み
そもそも、私たちはなぜ他人と自分を比べてしまうのでしょうか。それは人間の脳の仕組みに大きな原因があります。大昔、人類がまだサバンナで暮らしていた頃、生き残るためには集団の中で自分がどの位置にいるかを知ることが命に直結していました。あいつよりも足が遅いとか、あいつよりも食料を持っていないとか、そういう比較を瞬時に行うことが生存確率を高めていたわけです。つまり、他人と自分を比べて焦ったり羨ましがったりする機能は、私たちが生き残るために標準装備されたサバイバルツールだったと言えます。
しかし、現代社会はどうでしょう。サバンナではなく、コンクリートとインターネットに囲まれた世界です。SNSを開けば、世界中の「すごい人たち」のハイライトシーンがこれでもかと流れてきます。本来であれば比較する必要すらない地球の裏側のセレブや、同級生の中でたまたまうまくいっている人の姿まで、脳は「自分のすぐ近くにいる生存競争のライバルだ」と勘違いしてしまうのです。その結果、脳内では常にパトロール状態が続き、無駄なエネルギーを消耗してしまいます。
ここでちょっと面白いデータを見てみましょう。ある心理学の調査によると、SNSの利用時間が長ければ長いほど、幸福度が低下し、他者への嫉妬心が強まるという相関関係がはっきりと示されています。ある調査では、一日のうちSNSに費やす時間を半分にするだけで、わずか一週間で孤独感や抑うつ状態が有意に改善されたという結果も出ています。つまり、私たちが感じるモヤモヤの多くは、実体のない他人の虚像と自分を不毛に比較し続けることによって、自分自身で勝手に作り出しているエラー現象なのだと言い換えることができます。
■ルサンチマンという厄介な感情の正体
ここで少し哲学的な言葉を出しますが、難しく考えないでください。「ルサンチマン」という言葉を聞いたことはあるでしょうか。ドイツの哲学者ニーチェが広めた概念で、簡単に言うと「強者や恵まれた人に対する、弱者のねたみや嫉妬、そして恨みの感情」のことです。
例えば、自分よりも仕事ができる同僚がいたとします。本来であれば、「どうすれば自分もあんな風に成果を出せるだろうか」と自分の行動を改善するのが合理的なアプローチですよね。しかし、人間は時にその努力を面倒くさがったり、自分の能力不足を認めたくなかったりします。その結果、「あいつは上司に気に入られているだけだ」とか「あんなガツガツ働いて人生の楽しみを忘れているかわいそうな奴だ」と、相手の価値を心の底で引き下げることで、自分のプライドを守ろうとします。これがルサンチマンのメカニズムです。
このルサンチマンの厄介なところは、その場しのぎの精神安定剤にはなっても、自分の現実の状況を1ミリも良くしてくれないという点にあります。他人の足を引っ張りたいとか、不幸になってほしいと願うエネルギーは、ものすごい熱量を伴いますが、それはすべてドブに捨てるようなものです。エネルギーの方向が完全に間違っているんですね。
音楽の世界でも、この人間の心の闇を描いた作品はたくさん存在します。例えば、アーティストのしーくんが2017年に発表した楽曲に「ルサンチマン・クラブ」という作品があります。ボカロPとして知られるしーくんのミニアルバムやフルアルバムにも収録されているこの楽曲は、まさにそうした満たされない思いや、他者へのルサンチマンをテーマにしています。心地よいリズムと裏腹に、胸のチクッとするような感情がリアルに描かれており、多くのリスナーの共感を呼びました。私たちが日常の中で感じる「どうせ自分なんて」という諦めや、他者へのルサンチマンは、誰もが一度は足を踏み入れてしまう沼のようなものなのです。
■嫉妬心をエネルギーに変換するのではなく捨てる技術
世の中の自己啓発本などを見ると、「嫉妬心は成長のためのエネルギーに変えろ」なんてことがよく書かれていますよね。悔しさをバネにしてがんばるぞ、というストーリーはドラマや漫画のようで非常にドラマチックです。しかし、感情論を徹底的に排除し、合理的に人間の脳の仕組みを分析してみると、実はこの「嫉妬心をエネルギーにする」というやり方は、コストパフォーマンスが非常に悪いことが分かってきます。
なぜなら、嫉妬心や怒りというネガティブな感情を燃料にして走る車は、エンジンの摩耗が激しすぎるからです。常に誰かに対する敵意や劣等感をベースに動いていると、目標を達成した瞬間に燃え尽きてしまったり、万が一目標に届かなかった場合に強烈な絶望感や自己否定に襲われたりします。精神的な健康を著しく損なうリスクが高いのです。
ですから、私たちが目指すべきなのは、嫉妬心を燃やすことではなく、「嫉妬心の発生源を断つこと」であり、「感情をフラットにコントロールすること」です。
では、具体的にどうすればいいのでしょうか。まず第一にやるべきことは、情報の断捨離です。タイムラインを開けば他人のキラキラした情報が入ってくる環境に身を置きながら、「嫉妬しないようにしよう」と心に誓うのは、目の前に大好物のケーキを置かれた状態で「食べるな」と我慢するようなものです。脳の構造上、意志の力だけでこれを抑え込むのはほぼ不可能です。
だからこそ、システムで解決します。見たくない情報が目に入らないようにミュート機能を活用したり、SNSを開く時間を決めてタイマーをかけたりする。他人の情報に触れる総量を物理的に減らすこと。これが最も合理的で効果的な感情のコントロール方法です。
■客観的事実と主観的な解釈を切り分ける訓練
私たちがモヤモヤしたりイライラしたりするとき、脳内では「客観的な事実」と「自分が勝手につけた主観的な解釈」がごちゃ混ぜになっています。この二つを綺麗に切り分ける訓練をすることが、ルサンチマンに支配されないための強力な武器になります。
例えば、「同期が先に昇進した」というのは動かしようのない客観的なファクトです。ここでルサンチマンに囚われる人は、「会社は私のことなど評価していないんだ」「あいつはずるい手を使ったに違いない」という主観的な被害妄想や歪んだ解釈をそこにドッキングさせてしまいます。
しかし、冷静で合理的な人はこう考えます。「同期が昇進した。これは事実だ。では、彼と私のこれまでのアウトプットの量と質にどのような客観的な差があったのだろうか。会社の評価基準に対して、私の成果の出し方はどうアライメントされていたか」。感情を一切抜きにして、ただのデータとして状況を分析するのです。
もしここで、自分に足りないスキルや改善すべきポイントが見つかったのであれば、淡々とそれを修正すればいいだけです。逆に、会社側の評価基準が自分の価値観と全く合わないのであれば、文句を言うのではなく、より自分に適した市場へ移動するための準備を始めればいい。どちらにしても、怒ったりねたんだりする時間は一秒たりとも必要ありません。感情的になることは、問題解決のプロセスにおいて完全に「ノイズ」でしかないのです。
■感情のコントロールがもたらす圧倒的な自由
感情をコントロールし、ルサンチマンや嫉妬心を排除していくと、驚くほど人生の自由度が増していくことに気づきます。
人間の脳のメモリ容量には限界があります。一日のうちに使える認知のエネルギーは有限です。「あいつはムカつく」「なんで自分ばかりが」というネガティブな感情にそのメモリの8割くらいを使ってしまっていたら、肝心の仕事や自分の人生を豊かにするためのクリエイティブな活動に回せるエネルギーがほとんど残っていなくなってしまいます。
逆に、他人の動向や不条理なことに対して「まあ、そういうデータもあるよね」と受け流し、自分のコントロールできる領域だけに集中できるようになると、脳のメモリが常にクリアな状態に保たれます。すると、新しいことを学ぶスピードが上がったり、思いがけないチャンスに気づきやすくなったりします。結果として、人生の成果がトントン拍子に出やすくなるという好循環が生まれるのです。
これは決して、ロボットのように冷徹になれと言っているのではありません。むしろ逆です。無駄な怒りやねたみにエネルギーを奪われないからこそ、本当に大切な友人や家族と過ごす時間や、自分が心から楽しめる趣味に対して、純粋で豊かな感情を注ぐことができるようになるのです。
■今日からできる小さなステップ
ここまで、感情論を排して、ファクトと合理性に基づいた思考の重要性についてお話ししてきました。他者との不毛な比較をやめること、ルサンチマンという不経済な感情の罠に気づくこと、そして情報をコントロールして脳のメモリを守ることの大切さが伝わったでしょうか。
頭では分かっていても、長年の習慣というのはなかなかすぐに変えられないものです。明日またSNSを開けば、つい誰かと自分を比べてモヤモヤしてしまう瞬間があるかもしれません。でも、そのときに「あ、今自分はサバイバル脳が発動して、無駄な比較をしているな」と客観的に自分を観察する視点を持つだけで十分です。
その一歩を踏み出すために、今日からできるとても簡単なアクションを提案してこの記事を締めくくりたいと思います。今夜、スマホをベッドに持ち込む時間をほんの15分だけ短くしてみてください。そして、タイムラインを見る代わりに、今日一日の中で「自分がコントロールできたこと」と「うまくいった小さな事実」を一つだけノートに書き出してみるのです。他人は関係ありません。昨日の自分よりも、今日の自分が少しだけ客観的で合理的になれたかどうか。それだけを確認する習慣を続けるだけで、あなたの毎日は確実に、そして劇的に軽やかになっていくはずです。

