ちなみに私は遺伝学会を除名になったというヤバい過去があります
別に異端の説を唱えて長老の逆鱗に触れたとかでなく、単に会費の払い忘れです
— 猫教授 (@yaskaz) January 19, 2026
猫教授さんの「ヤバい過去」が「会費の払い忘れ」だったって話、みなさんもうご存知ですか? このニュース、SNSでプチバズりしたそうなんですが、これって単なる面白いエピソードとして片付けちゃいけない、実はめちゃくちゃ奥深い話なんですよね。心理学、経済学、統計学の視点から掘り下げてみると、「へぇ〜!」って膝を打つような人間の行動原理や社会の仕組みが見えてくるんです。今回は、この猫教授さんの体験を材料に、私たちの日常にも潜む不思議な現象を科学的に紐解いていきたいと思います!
■ なぜ私たちはドラマチックな「異端の学者」を求めてしまうのか? 期待の裏切りがもたらす心の動き
猫教授さんが「遺伝学会から除名された」と聞くと、多くの人が「おお!これは何かすごい研究で既存の学説を覆したのか!?」とか、「まるで中世のガリレオのように、新たな真実を唱えて追放されたのか!?」なんて想像しちゃったんじゃないでしょうか。まさに「『チ。』みたいな熱い展開を期待していたのに、、、」というコメントがそれを象徴していますよね。
これは心理学でいうところの「■利用可能性ヒューリスティック■」と「■確認バイアス■」が働いている典型的な例なんです。利用可能性ヒューリスティックというのは、人は何かを判断するときに、頭の中で思い浮かべやすい情報や例に引きずられやすい、という認知の偏りのこと。映画や小説、漫画なんかで描かれる「異端の学者」のイメージって、だいたいが既存の権威と戦い、壮大な発見をするヒーロー的な存在じゃないですか。だから、「除名」という言葉を聞いたとき、私たちは無意識のうちに、そういったドラマチックなストーリーをすぐに連想しちゃうんです。
さらに、「■確認バイアス■」も加わります。これは、自分が信じたい情報や、自分の仮説を裏付ける情報ばかりを集めてしまい、反証する情報を無視したり軽視したりする傾向のこと。猫教授さんが「ヤバい過去」と言った瞬間、私たちの脳内では「異端の天才学者」という仮説が形成され、その後の情報もその仮説に沿って解釈しようとするわけです。「除名」という言葉が、その仮説をさらに強く裏付けるように感じられたため、余計にドラマチックな期待が膨らんだんですよ。
だからこそ、「会費の払い忘れ」というあまりにも現実的で平凡な理由が明かされたとき、多くの人が「ずっこけた」り、「予想外の展開に驚き」の声をあげたんですね。この期待の裏切りこそが、この話がプチバズした大きな要因の一つ。心理学の「■不一致理論(Incongruity Theory)■」というユーモアに関する理論があるんですが、これは「人は予期せぬ不一致やギャップに直面したときにユーモアを感じる」と説明しています。つまり、壮大な期待と地味な現実との間に生まれた大きなギャップが、多くの人にとって面白いと感じられ、それが共感と拡散に繋がったってことなんです。
「男の夢、『除名した学会への復讐に執念を燃やすマッドサイエンティスト』になるための一番難しい条件が容易にクリアできてしまう。」というコメントも、この「期待の裏切り」が生み出すユーモアをよく捉えていますよね。現実のささやかな理由が、非現実的なロマンを簡単に現実に変えてしまう皮肉さ。これって、人間の認知の面白さを浮き彫りにしています。
■ なぜ研究者は学会費を払い忘れてしまうのか? 行動経済学が暴く「あるある」の深層
猫教授さんの「会費の払い忘れ」による除名が「学会あるある」として多くの共感を呼んだのは、本当に興味深い現象です。「私も情報処理学会を追われたヤバい過去があります。同じく会費の払い忘れです。」とか、「私も日本臨床催眠学会除名となりました。同じく2年間会費を支払いしてなかったからです」といった体験談が続々と寄せられたことからも、これが決して珍しい話ではないことがわかります。
一体なぜ、知的な研究者たちが、こんなうっかりミスをしてしまうのでしょうか? ここに行動経済学の知見を導入すると、面白い答えが見えてきます。
まず一つ目は、「■限定的合理性(Bounded Rationality)■」です。経済学では伝統的に人間は「ホモ・エコノミクス(経済人)」と呼ばれ、常に合理的に判断し行動すると考えられてきました。しかし、ノーベル経済学賞を受賞したハーバート・サイモンは、人間の合理性には限界があることを指摘しました。私たちは情報処理能力や時間、認知資源に限りがあるため、常に完璧に合理的な意思決定ができるわけではありません。研究者たちは、自分の専門分野においては驚くほどの合理性と集中力を発揮しますが、それ以外の、例えば事務的な手続きや日常生活の雑務となると、そのリソースは大幅に削られてしまいます。学会費の支払いなんて、研究の最先端を追う彼らにとっては、優先順位がかなり低いタスクなんですよ。
二つ目に、「■将来割引(Time Discounting)■」の傾向です。人は、今すぐ得られる利益や、今すぐ避けられる不快感を、将来得られる利益や将来避けられる不快感よりもずっと大きく評価します。学会費を支払うという行為は、今すぐ手間と(少額とはいえ)お金がかかります。一方、除名されるという損失は、すぐに起こるわけではなく、数ヶ月後、あるいは数年後の話です。この将来の損失を過小評価し、今の手間を回避しようとする心理が、「まぁ、そのうち払えばいっか」という先延ばしに繋がりやすいんです。
三つ目に、行動経済学で非常に強力な概念である「■デフォルト効果(Default Effect)■」が挙げられます。デフォルト効果とは、人が自分で選択を行わない場合、あらかじめ設定されている選択肢(デフォルト)をそのまま受け入れる傾向のことです。もし学会費の支払いが「自動引き落とし」や「クレジットカード払い」で、しかもそれが最初からデフォルト設定されていたらどうでしょうか? きっと払い忘れは激減するはずです。ところが、多くの学会では、会費の支払いが「自主的な振込」や「郵送された振込用紙での支払い」といった、能動的な行動を求める形になっていることが多いですよね。これは、デフォルトが「何もしない=未払い」になっているため、払い忘れのリスクが高まってしまうんです。
さらに、これは社会心理学的な視点になりますが、「■社会的比較理論(Social Comparison Theory)■」も共感の広がりを説明できます。人は、自分の能力や意見が正しいかどうかを判断するために、他者と比較する傾向があります。自分が「うっかり者」だと思っていても、他の多くの研究者も同じような経験をしていると知ることで、「自分だけじゃないんだ」という安心感や共感が生まれます。これが「学会あるある」という言葉を生み出し、投稿がさらに拡散する原動力になったと言えるでしょう。
この「あるある」が統計的にどの程度「ある」のか、という視点も重要です。実際に会費の払い忘れによる除名が全除名者数の何割を占めるのか、というデータがあればもっと面白いのですが、残念ながら一般には公開されていません。しかし、これだけ多くの体験談が寄せられるということは、ベースレート(基本的な発生率)が私たちが想像するよりも高い可能性を示唆しています。私たちは「異端の説」のような珍しい理由を想像しがちですが、実際には「平凡なミス」が圧倒的に多い、という「■ベースレートの誤謬■」に陥っていたのかもしれませんね。
■ 学術コミュニティというエコシステムと、インセンティブ設計の妙
学会という組織は、単なる研究者の集まりではありません。そこには、知識の共有、共同研究の促進、若手研究者の育成、研究倫理の維持など、学術の発展に不可欠な「■エコシステム■」が形成されています。会員であることは、これらの恩恵にあずかるための「パスポート」のようなものです。
経済学的に見れば、学会費は会員がそのコミュニティから得られる「■ネットワーク外部性■」や「■シグナリング■」に対する対価と言えます。ネットワーク外部性とは、あるサービスや製品の価値が、それを利用する人の数が増えるほど高まる効果のこと。学会は、会員が多いほど、より多様な情報が集まり、議論が活発になり、その価値が高まります。また、学会に所属していること自体が、研究者としての専門性や信頼性を外部に示す「シグナル」となります。除名されるということは、この「シグナル」を一時的に失い、ネットワークの恩恵を受けられなくなる、という損失を意味します。
では、学会側はなぜ会費の支払いを徹底させようとするのでしょうか? まずは組織運営のための財源確保が最たる理由ですが、それ以上に「■フリーライダー問題■」を回避するという側面もあります。会費を払わずに学会の恩恵だけを受けようとする人が増えれば、組織は立ち行かなくなります。除名という制度は、このフリーライダーを抑制し、公平な負担を促すための「■インセンティブ設計■」の一つなんですね。
しかし、猫教授さんのケースや他の「あるある」体験談を見ると、現在のインセンティブ設計には改善の余地があると言えるかもしれません。先ほど行動経済学の項目で触れたように、デフォルト設定の変更(自動引き落としの推奨・義務化)や、支払いを忘れる研究者への効果的な「■ナッジ(Nudge)■」の導入が考えられます。ナッジとは、強制することなく、人々の行動を望ましい方向にそっと後押しする働きかけのこと。例えば、「あと○日で除名されますよ!」といった強い警告ではなく、「来年度の学会費を今お支払いいただくと、記念品をプレゼント!」といったポジティブなインセンティブや、「継続は力なり! 学術コミュニティへの貢献をお願いします」といった、支払いの意味を再認識させるようなメッセージも効果的かもしれません。
そして今回、猫教授さんが除名された学会の分科会に、再びトークゲストとして招かれたという展開は、非常に興味深い現象です。これは、単に「会費を払わなかった」という理由で、その研究者の本質的な能力や貢献を否定するものではない、という学術コミュニティの柔軟性を示唆しています。むしろ、その「人間味あふれる過去」が、分科会のテーマである「若手スティミュレーション」という、学会の未来を担う人々を刺激する場において、ある種の親しみやすさやユニークな視点をもたらすと考えられたのかもしれません。これは、学術界が従来の堅苦しいイメージだけでなく、よりオープンで人間的な側面も受け入れるようになった、現代的な変化の表れとも言えるでしょう。
■ 「マッドサイエンティスト」の現代的解釈:完璧ではない魅力が社会を動かす
「ぷにるの真戸博士が実在した」「リアル真戸博士やってる人おって草」といったコメントも印象的でした。創作物における「マッドサイエンティスト」のイメージは、往々にして常識外れで、時に危険な研究に没頭する、孤高の天才というものです。しかし、猫教授さんの「会費払い忘れによる除名」という「ヤバい過去」は、そんなステレオタイプとはかけ離れた、むしろ人間くさい「マッド」さですよね。
この現象は、現代社会における「異端」や「マッド」のイメージが、少しずつ変化していることを示唆しているように思えます。かつては完璧で高潔な存在として描かれがちだった「学者」像に、人間らしい「うっかり」や「ズボラさ」が加わることで、かえって親近感がわき、魅力的に映るという心理。これは、SNS時代において「完璧な人」よりも「ちょっと抜けている人」の方が共感を呼びやすい、という傾向とも重なります。
心理学で「■不完全さの効果(Pratfall Effect)■」というものがあります。これは、一般的に有能であると認識されている人が、ちょっとしたミスを犯すことで、かえって魅力的に感じられる、という現象です。猫教授さんの場合も、きっと普段は非常に厳密で優秀な研究者であるという前提があるからこそ、「会費の払い忘れ」というミスが、人間味あふれる魅力として受け止められたのではないでしょうか。この「完璧でないことの魅力」が、この話題がプチバズしたもう一つの重要な要因なんです。
この「人間らしい」側面が、特に若手研究者を刺激する場である「若手スティミュレーション」で語られることには、大きな意味があるでしょう。「完璧でなければならない」というプレッシャーを感じがちな若者たちにとって、「あの猫教授ですら、会費の払い忘れで除名されたことがあるんだ」という事実は、良い意味で肩の力を抜かせ、彼らが抱える不安や焦りを和らげる効果があるかもしれません。「失敗しても大丈夫。人間らしい一面があっても、研究者として認められるんだ」というメッセージは、形式的な成功体験よりも、はるかに心に響くはずです。
■ 猫教授さんの「プチバズ」が私たちに教えてくれること
猫教授さんの「会費の払い忘れによる学会除名」という一連の出来事は、単なる個人のエピソードを超えて、私たちの社会、特に情報がどのように拡散し、人々の心理にどう影響するかについて、多くの示唆を与えてくれます。
この話が「プチバズ」した背景には、■感情の喚起■と■ソーシャルシェアリング■の密接な関係があります。心理学の研究では、喜び、驚き、共感、怒りといった強い感情を喚起するコンテンツほど、SNSで共有されやすいことが示されています。猫教授さんの投稿は、「壮大な物語の期待」と「予想外の落胆(ユーモア)」という、ポジティブな驚きと笑いの感情を強く引き起こしました。そして、「自分も同じ経験がある!」という「あるある」が、強い共感を生み出し、人々が「この面白さを誰かに伝えたい」「自分も似た話があるからシェアしたい」という内発的な動機付けを促した結果、情報が爆発的に拡散したと考えられます。
また、この一件は、学術コミュニティが持つイメージや、研究者の働き方に対する社会の認識が変化していることも示しています。かつては閉鎖的で堅苦しいと思われがちだった学術界が、SNSを通じてその「人間らしい」側面を見せることで、より開かれた存在として受け入れられ、一般の人々との距離を縮める機会にもなっています。
最終的に、この物語は「一度は除名されたけれど、再びその知見が求められる」というハッピーエンドへと向かっています。これは、学術界がその厳格さの中に、個人の人間性や多様な経験を受け入れる柔軟性を持ち合わせていることの証かもしれません。そして、そうした「完璧でない人間」が、それでも社会に価値を提供し、次の世代を鼓舞できるのだという、希望のメッセージを私たちに投げかけてくれています。
さあ、皆さんもこの猫教授さんのエピソードから、何か感じるものがあったでしょうか? もし興味が湧いたら、ぜひ「第6回日本遺伝学会春の分科会『若手スティミュレーション』」の詳細をチェックしてみてください。猫教授さんが言うように、「この人たちがトークして面白くないわけがない」はずですからね! もしかしたら、あなたの忘れられた学会費の請求書も、この機会に見直してみる良いきっかけになるかもしれませんよ?

